エピソード58



「ぐすっ」

 


「遥架さんもともこさんも…」


「なんで泣いてるんですか?」

「…ぐすっ」


「ぐすっ」


 

「まいさんも…」



「なんでみんな泣いてるの!」



「・・・」


  

「私、ついこないだ、かなたくんに

会ったばっかりなんですよ!」


「・・・」

「・・・」

「・・・」

「…あ!」

「あれですよね!同姓同名ってやつ!」


「遥架さんの知ってるかなたくんと私の知ってるかなたくん…

おんなじなんてあり得ないでしょ!!」


「…またすぐ会え…!?」




ガサゴソ…



「…どこ行くの?」

  


      「…さなちゃん」


「ん?」



「今日は招待してくれてありがと^^」


「お姉ちゃん用事思い出したから

今日はもう行くね」


「また会える?」

「うん、勿論^^」


「やった^^」

「どこ行くの?」



                「…かなたくん探しに行く」


「でも今日日曜だよ」


「大学にはいないんじゃ

       「探しに行くの!!」


「・・・」

                     「…ううん違う」



                  「…『かなたくんに』探してもらいに行く」


「あ、あの!」


「なんですか!?」



「今日は、さなえの為に来てくれて」

「本当にありがとう」



「・・・」



「さなちゃん、バイバイ^^」


「バイバーイ^^」



カチャッ

キィ~




バタンッ!




しーーん





「…続き、読みますね」



「…ふぅ」


「ひとの過去は消し去る事はできません」

「過去は全て、脳内にデータとして保存されています」


「『忘れる』事は単に、その情報との繋がりが遮断された状態」

「そしてその情報に再接続されることを『思い出す』と呼びます」



「ねぇママぁ」

「ん?」


「『のうない』ってなぁに?」


「『しゃだん』って?『さいせつぞく』って?」



「んー…」


「ママにも説明するのが難しい言葉だから」

「あとで智子先生に聞こうねぇ^^」

「えっ」 

「うん!」


「私もさーっぱりわからなかったから」
「先生、お願いしますね!」


「あっはい」

「くす 笑」




「続き、お願いします」




「マイナスの過去は、時が経てば経つほど、

それは『とても大きなもの』だと錯覚をしてしまいがちです」


「『目を逸らす』のではなく、きちんと認識をしてあげる事で

初めて、過去の呪縛から心が解放されます」


「!?」


「遥架さん、どうかしましたか?」


「…もしかしたら」



「もしかしたら困惑をして、



この場を立ち去る人がいるかもしれません」


「!?」


「そして興味を抱く人も」




「皆さんの『悲しい』や『苦しい』や『辛い』は、

さなちゃんが吹き消してくれました」



「認識して受け入れられるように、

さなちゃんが魔法をかけてくれたのです」



「やったね!さなちゃん!」


「お誕生日おめでとう!」
「そしてみんなに魔法をかけてくれてありがとう!」


「やったーー!!」


「やったーー!!」

「ほら、さなちゃん 走り回ると危ないよ」

        「やったーー!!」


「やったーー!!」



「ママやったよ!」


「ママもいままでのママたちにありがといえたでしょ!」


「さながまほーかけたんだよ!!」



「さなちゃん…ぐすっ」



「やったーー!!」



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