エピソード68
「・・・」
「…ふぅ。」
「お務めご苦労様です」
「!?」
「模範囚だったそうですね、凄いなぁ」
「・・・」
「あそこで座って絵本を読んでるコ」
「『さなえちゃん』だって言ったらどう思います?」
「…誠さん」
「!?」
「大切な娘さんを傷付ける人は許せませんよね」
「…でも」
「貴方はそう言い切れるんでしょうか」
「…だ、誰だ。」
「こっち向かないほうがいいですよ」
「…向いてもいいですけど」
「・・・」
「貴方がホテルのレストランで置き去りにした『有村倫子』さん」
「ご結婚されて、お子さんもいらっしゃるんですよ」
「それと…」
「貴方の奥様だった『藤森麻衣』さんもすっかり傷は癒えて、
さなえちゃんと幸せに暮らしてます」
「あ、あと」
「鎌倉に住んでらっしゃる『岸峰節子』さん」
「!?」
「節子さんと、大好きなシベリアを食べながら
楽しくお喋り、してきました」
「貴方が手を掛けた女性は皆さん、
今は幸せな笑顔で過ごしてます」
「・・・」
「貴方が壊したものは」
「僕が全て治しました」
「・・・」
がくがくがく…
「貴方の罪は一生消えません」
「でも…」
「心から償う気持ちがあれば…
多少は神様も、
許してくれるかもしれませんよ」
「・・・」
がくがくがく…
「あ、そうだ」
「あと…」
「『藤谷涼子』さんにもお会いしました」
「!?」
「勿論、26年前に亡くなる『前に』」
「貴方の初恋の人だけあって、とても清らかで美しい人ですね」
「安心してください」
「貴方がしてきたことは教えてませんから」
「・・・」
がくがくがく…
「それとも…」
「・・・」
がくがくがく…
「教えてあげたほうがよかったですか?」
「・・・」
がくがくがく…
「・・・」
がくがくがく…
「・・・」
がくがくがく…
「・・・」
がくがくがく…
「・・・」
がくがくがく…
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