Episode.20



コンコンッ


「はーい」


「陽介です!」


「どうぞー」


カチャッ キィ~


「失礼します!」

「失礼しま~す」


パタンッ



「あれ?小鳥遊さんは?」


「治氏に呼び出しくらって、

サークルのほうに行きました」


「そっか」



「大体準備は出来てるけど、

どんな感じで進める?」


「最初はフツーに光一さんが振ってください」


「演奏し慣れた曲がどれだけ体に染み込んでるか、

デフォルトが分かるんで」


「オーケー」


「でそのあとで、希ちゃんのチカラも借りて、

皆さんの固定観念をぶっ壊しにかかるんで 笑」

「はは、オーケー 笑」


「手加減なしでどんどん壊しちゃって」

「多分、今のウチらにはそういうのが必要だと思うし」



コンコンッ


「失礼しまーす!」


ガチャッ キィ~

「チューニング終わりました!」


「よし、じゃあ始めるとしますか!」

「ういーっす!」


                       「はーい」







♪♫~ッ!




がやがや…



「…ふう」



「案外事故らずに通せるもんだね 笑」




「じゃああとは陽介くんにお任せして」


「あ、はい」





「えっと治氏みたいにおもろい事は話せないんで 笑」



「よろしくお願いします」


よろしくお願いします!



「先ず今ある譜面台、譜面ないんで片しちゃいましょう」



カチャカチャ…


「いつも譜面台ってどこにしまって」


「あそこにある箱」



「じゃああの箱に皆さんしまっちゃってください」



ガタガタ…




「オッケーです」



「えっと多分2年くらいかな?」



「譜面台は、あの箱から出される事はありません」

げっ!


( ; ゚д)ザワ(;゚д゚;)ザワ(д゚; )



「す、凄いな。。」

「ってかみんな動揺し過ぎぃ 笑」


はは…



「なので今まで頑張ってくれた譜面台に、

『譜面台さん、ありがとう』とお礼を言いましょう」


へ?


「はい、みんなであの箱のほうを向いて」


「さんはい!」


譜面台さん、ありがとう


「はい足踏みぃ~!」


バタバタバタ…!


「はは 爆笑」

「陽介さん、じゅーぶん面白い 笑」



「で前回治氏が言ってた、『握手』を無意識でするように、

皆さんの演奏する楽器も、限りなく無意識に近づける方向で、

練習をしてもらいたいと思います」



「例えば『歌』っていうのは」


「♪♫~♪~」


「すげー…」

   「カッコいい…」



「脳と声帯とが直結してるので、

イメージと声も直結しやすいのですが」


「皆さんが演奏する楽器というのは、

『発音する部分』が完全に脳と分離していて、

音高の変え方も、それぞれの楽器の仕組みによって

異なると思いますが、それもまた完全に分離しているので」


「なるべく脳と楽器を直結させるよう、

個人練習やパート練習をしてもらえばなと思います」




「おやおやぁ?」


「返事がないなぁ」


はい!



「で、あそこに座ってる光一さん」


「僕?」



「光一さんの事を今日から指揮者ではなく、

絵描き、画家だと思ってください」


「んー、希ちゃん、呼び方なにがいいと思う?」



「んー、『画伯』とか?」

「お!それいいね!」



「じゃあ皆さんこれからは光一さんの事を、

『坂口画伯』と呼びましょう!」



「さんはい!」


坂口画伯~!



「なんか恥ずかしいぞ、これ 恥」


爆笑



「舞台は真っ白なキャンバス」


「坂口画伯は指揮棒を絵筆代わりにして、

その曲の情景を描いてゆきます」


「皆さんは絵の具です」


「画伯の表現できる幅を拡げるために、

画伯の感覚が100%投影できるよう、

品質のいい絵具を目指しましょう^^」


「すげーな、よーすけくん…」

お~ぉ



「ではここで、希ちゃんにお手伝いしてもらって」


「あ、はい」


「皆さんに『ちゃんと鳴った時の和音』を

体感してもらいたいと思います」



「キーはB♭がいいのかな、やっぱり」



「B♭、D、F、『シレファ』の3和音を…1音3人ずつ、

9人で鳴らしてもらおうと思います」


「ピッチコントロールに自信のある人ぉ~…

手を挙げて!」



「いち、にい、さん…



ちょうど9人だ 笑」



「そしたら皆さん、椅子でおっきな円を作ってもらって」

「吹かない人は、楽器を置いて円の中に集まってください」


ガタガタ…


( ; ゚д)ザワ(;゚д゚;)ザワ(д゚; )



「みんなの反応が超面白い 笑」



「そしたら手を挙げてくれた9人は、皆さんを囲むように、

均等に円になって分かれてみてください」



「うん、大体そんな感じかな…」



「じゃシとレとファ、ランダムに分かれてみてください」



「…決まったでしょうか」


「じゃあ、『さんはい』で鳴らしてみましょう」


「さんはい!」


シレファ~♪



「オッケーです」


「じゃあ今度はもう一度同じように鳴らしてもらって、

息継ぎは全然していいので 笑、


ロングトーンで鳴らし続けてください」



「んで希ちゃんに微調整をしてもらいます」


「さんはい!」


シレファ~♪


「もうちょい上で」



「もうちょい」


「そこで!」



「少し音量を抑えてもらって


…そんくらいです!」




「少し下で」


「もうちょい

♫シレファー!♪♫

「うわっ、すげ!」


( ; ゚д)ザワ(;゚д゚;)ザワ(д゚; )



「ムッチャ倍音が聴こえたと思います」


「これが『ちゃんと鳴った時の和音』の鳴りです」

「今体感した感じを忘れずに」


はい!


「急に元気になった 笑」




「で坂口画伯と交代して結構時間が経ちましたが…」

「全然曲は吹いてません 笑」




「曲を吹く、その前段階で必要なことが、

結構あるってことがわかったと思います」


「じゃあ皆さん座っていただいて…」



「なんかフルーツバスケットやるみたいになってますね 笑」

「やりませんからね~」


爆笑



「えっとコンダクタースコアは…」

        「あ、はい!」


「お、製本までしてくれた」

「すぎしたさん、ありがとう^^」


       「いえいえ^^」



「最初に演奏してもらった曲の、

コンダクタースコアをパート分、

すぎしたさんにコピーをお願いしました」


「これをそれぞれのパートリーダーのかたに渡してください」


「はい」





「渡ったでしょうか」


はい!


「で合奏前に坂口画伯が、皆さんの、ポップスのパート譜を

全て強奪して回ったと思いますが」



「あれ、画伯がシュレッダーしちゃったので、もうありません 笑」

えっ!?


( ; ゚д)ザワ(;゚д゚;)ザワ(д゚; )


「みんないちいち動揺し過ぎ 笑」



「先ほど『脳と楽器を直結させる』練習の話をしましたが、

それとは別に、

『心と楽器を直結させる』、

メンタルのトレーニングもしていこうと思ってます」



「楽譜っていうのはあくまでも

その絵画のガイドブックに過ぎなくって」

「楽譜に依存してしまうと心と楽器の間に

脳が割り込んできてしまいます」


「一回脳みそに行っちゃうことで温度が冷めるというか、

出前のお蕎麦が汁吸ってのびちゃうというか」



「暗譜も単に譜面を脳内にコピペしただけなので、

どうしても脳に寄り道してしまいます」


「メロディーが何を描いてるのか、

自分が吹いてる全音符は、絵画の

どの部分になってるのか」

「それを視覚的に認識してもらうために、

コンダクタースコアに慣れてもらおうと思います」



「さすがに今練習してる曲全てを…


えっと『オリジナル』でしたっけ(;・∀・)

「そう、オリジナル」

オリジナルもシュレッダーしちゃうのは、

流石に無謀だなぁと思ったので 苦笑」



「けれどもオリジナルを演奏する際も、なるべくその


『脳と楽器を直結させる』こと、


『心と楽器を直結させる』こと、


品質の良い絵の具になって、画伯のイメージがそのまま、

美しい風景画になるよう意識をしてみてください」




「えっと」


「…取りあえず今日はこんな感じで」



( ゚Д゚ノノ”☆パチパチパチパチ


「よーすけくん、すごい!」





「いやぁまさか円の中心で話すとは思わなかった」


爆笑


「みんな、引き返すなら今のうちだよ!」



「僕はワクワクが止まんないんだけど」


(゚д゚)(。_。)(゚д゚)(。_。) ウンウン



「みんなー!」


「よーすけくんの子供になる覚悟はできたかー!」


おー!ヾ(≧∀≦☆)


「…でた 笑」


「ニューヨークに行きたいかぁー!」


おー!ヾ(≧∀≦☆)


「すごい団結力 笑」


「いくぞー!」



「いーち、にーぃ、さーん…」


しーーぃっヾ(≧∀≦☆)


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