Episode.20



「その女、ストーカーとかですよ、絶対!」


「…でもなんだか、知り合いみたいだったし」


「ストーカーって、妄想で知り合いになって、
恋人だと信じて疑わない人もいるって言いますし!」



「うーん…」


「アタシはそのあとの、健治さんの挙動の方が気になるなぁ…」


「だって『熟年夫婦』の旦那が、

いきなり女房の手ぇ握って救いを求めたんだよぉ?」


「思い出したくない過去とかありそうな感じじゃない?」



「最初の頃健治さんとお話した時、

「過去は詮索しないで」ってニュアンスの事を言われたんで」


「私自身、人の過去には拘らないので、その時は了承したんですけど。。」



「あまりに動揺してる健治さんを見たら、私もなんだか不安になっちゃって…」



「健治さんって昔の話、全然しないんですか?」


「うん、全く」



「いいなぁ~」


「へ?」


「私の彼氏なんてすーぐ、昔の自慢話ばっかり」


「少年野球じゃあバンバンホームラン打ってたとか、

中学で第二ボタンの取り合いになったとか」


「「ふーん」しか言えない話ばっかするんです!」


「しかも、自分がもらった昔のラブレターとかを、

自慢げにわたしに見せるんですよ!」


「もう全然意味わかんない!」



「はいはい、愛菜ちゃんも色々あって大変だねぇ」


「そのいちご大福食べていいから」


「やった!」


ぱくっ



もぐもぐ…



「んふふ~♡」


「幸せそうに食べるねぇ、愛菜ちゃん」


「はい!幸せです^^」



「その切り替えの早さが羨ましいよ」


「ねぇ、暢子ぉ」



「はい、本当に」




「本人が話したくないなら、自分で調べちゃえば?」


「でも…」


「そういうところが真面目すぎんのよ、暢子は」


「健治さんのこと、本気で好きなのは誰が見ても分かるし」

「ねぇ、愛菜ちゃん」


「はい!暢子さん、健治さんにマヂぞっこんです!」



「別に相手の悪事を暴こうっていうわけじゃないんだし」


「不安な気持ちを少しでも取り除いてあげたいっていう、愛情からの行動なんだから」


「どんな過去でも、健治さんへの気持ちは変わらないんでしょ?」



「…はい」


「どんな過去でも受け入れられる覚悟があんなら、

きっと健治さんの不安を拭い去ってあげられるよ、暢子なら」


「暢子さん、私も応援します!」



「ぷっ 失笑」


「愛菜ちゃん、ありがとう^^」


「灯里さん、なんかわたし笑われちゃいました!」


「口の周り、粉まみれだもん 笑」


「あはは…笑」



「灯里さんもありがとうございます」


「いいのいいの、暢子からは結構いろんなアイデア貰ってるから」


「でも探偵雇ったりとかはそれ、やり過ぎだからね 笑」



「ふふ 笑」


「自分のできる範囲で、ですね^^」


「わたしもできる範囲で協力しますんで、

こき使ってください!」


「ありがとう^^」



「じゃあ、アタシが早速、愛菜ちゃんを扱き使おうかなぁ」

「え!?」


「仕事部屋の整理手伝って」

   ガチャッ!


   「だから整理じゃなくって大掃除…」


「なんか言ったぁ?」


「いえ!なにも!」




「…ふぅ」


「どっから調べよ」


「あ!こっちの仕事疎かにしたらダメだかんね」


「はーい」




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