エピソード26



                    トントン


「…兄さん、ちょっといい?」



「ん?いいよ」


                    カチャ


「勉強だったら教えられないよ?」


           「うん、わかってる」



     「…相変わらず散らかってるね」



「ん?お母さんしにきたの?」


「片付けないよ、私」


「うん、わかってる」



「兄さんのファン、見たら幻滅するだろなぁ」



「この部屋を見れるコって…」

「ストーカーしかいないでしょ 笑」


「そか 笑」


「それにウチに入る事自体しないでしょ」


「いくらストーカーでも」


「わかんないよぉ」


「あら悠斗のお友達かしら?」ってお母さんが声かけて」

「寒いでしょ~、悠斗呼んでくるからお茶でも飲んで待ってて!」

なんて言いながら、普通にお茶とお茶菓子出して」

「「悠斗ぉー、お友達来てるわよー!」

って呼ぶんじゃない?」


「桜、相変わらず母さんのマネ上手いね 笑」


「ふふ 笑」



「でも母さんならやりかねかいから、「ちょっと怖っ!」ってなった 笑」


「気をつけなよ~ 笑」

「気をつけまーす 笑」



「で?」


「ん?」



「お喋りしにきたわけでもないんでしょ?」


「…うん」




「なんかあった?」



「…あのさ」


「恋愛感情の『好き』ってどんな気持ち?」




「んー…」



「わかんない」


「え? 笑」


「ん?」



「いや、兄さん恋愛経験豊富だから」

「直ぐ答えが返ってくると思ってたから」


「今だって舞さんと付き合ってるし」




「…わかんないから恋愛してるのかも」


「え? 」



「色んなひとの『好き』っていう感情を参考に、学んでるって感じかなぁ」


「う~ん… 」



「『好き』にも色んな『好き』があるってのがだんだんわかってきて」


「でも今までの同年代の『好き』って感情は…なんか違くって」

「だから舞さんと付き合ってるのかも」


「舞さん、『大人の女性!』って感じだもんね」

「いくつ違うんだっけ?」


「んと…7つかな、確か」


「私と10も離れてるのかぁ」



「んで」

「なんで知りたくなったの?『好き』がどういう気持ちかって」




「…あのね」


「同じクラスのひとにね」


「『好きです』って…」


「告白されたの…」




「そっか」




「んでそのコにはなんて返事したの?」



「ちゃんと返事したいから時間ちょうだいって」


「そか」




「…そのコと一緒にいる時『楽しい』って感じる?」



「ん~… 」


「割と…楽しい、かな」


「…話も合うし」



「んじゃ付き合ってみれば?」


「え!?」


「顔が『好きなタイプ』ってだけで「好きー!」「付き合いたいー!」

って思う人もたくさんいるんだよ」

「話が合うってだけでもじゅーぶん付き合う理由になると思うよ」


「ん~… 」


「でも…」


「頭で悩むより動いてみたほうが自分の、

『好き』って感触を探せると思うんだ」


「僕も探してる最中だし^^」



「・・・」



「今思うと『10代の恋愛』って『予行演習』みたいなもんだったんだなぁって…」


「20歳過ぎると、好きってだけじゃ付き合えなかったり、

互いに本性を隠して探り合ったり…」



「なんかめんどくさそ… 笑」

「笑」


「純粋にその人の何かを好きになって、それで付き合えるのは、

10代の特権なんだって僕は思うよ」


「…ってまだ21なんだけどね 笑」


「笑」



「それに」


「?」


「告白するって結構勇気がいるよ~^^」



「兄さん、告白した事あるの?」


「無いよ 笑」


「なんだ 笑」



「自分の『好き』っていう感触が、まだ解らないから無いんだと思う」



「そのコは勇気を振り絞って桜に告白したんだから」


「そのコはもう自分の『好き』っていう感触を知ってるし、

桜に気持ちを伝えたくなるくらい『好き』って気持ちがあふれてる…」


「『好き』って気持ちを教えてもらうには、いい先生だと思うよ^^」



「そう…かもね」


「悠斗ぉー」


「あっ」


「?」


「ストーカーだったりしてね 笑」


「ふふ 笑」


「なにーー?」



「電球が切れちゃったのよぉー」
「替えてくれるぅー?」


「今行くーー」



「兄さん」



            「ん?」


「ありがとう」


            「いえいえ^^」

                       カチャ


「あ、そうだ」

「ん?」


  「机にある雑誌、桜にあげる」

「なに?これ」


    「兄さんの記念すべき『読モデビュー』のやつ^^」

!!

                       パタンッ



「いつの間にそんなこ…」


とん とん とん



「どこの電球?」

「1階のトイレ」

ペラ ペラ ペ…


「んと…」

「本当に載ってる…」


「替えも切らしちゃってるみたいだから、

コンビニ行って買ってくるよ!」


「あらま、悪いわねぇ」


                    「大丈夫、直ぐそこだし」


ペラ ペラ

「こっちにもいた…」

                          「ありがとうね」


カチャッ


キィ~


「行ってきまーす^^」

                          「いってらっしゃーい」




バタンッ!

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