エピソード55
「…ふぅ」
終わっちゃったなぁ~
・・・
「…って冷たっ!」
「笑」
「後夜祭行かないの?」
「なんだ、かなたくんかぁ」
「『ヒロイン役、お疲れさまでした』の差し入れ^^」
「どっち飲む?」
「んー…
こっち!」
「はい」
「ありがとう^^」
シュコッ シュコッ
ごくごく
「自販機にさ」
「ん?」
「よく『あったか~い』とか『つめた~い』とか書いてあるでしょ」
「うん」
「『あったか~い』はニュアンス的にわかるんだけど、
『つめた~い』ってさ『つめたっ!』って書いたほうが売れると思わない?」
「さっき思いついたでしょ、それ 笑」
「うん、さっき思いついた 笑」
ごくごく ごく
「…ふぅ」
「…今日の私、どうだった?」
「…それは褒めるほう?それとも感じたまま?」
「言わなくてもわかるでしょ?」
「そうだね 笑」
ごくごく
「演技はやっぱり群を抜いてたね、さすが!って感じ」
「でも…」
「でも?」
「ハッピーエンドに近づくにつれ、勢いが弱くなったって印象、かな」
「・・・」
「そっかぁ~、やっぱりかなたくんには分かっちゃうかぁ」
「…ふぅ」
「まだ引っかかってる?」
「んー…」
「もう『かさぶた』になって取れそうになってるんだけど…」
「…まだ『かさぶた』があるのが気になるって感じ、かなぁ」
「そっか」
「でもね、
最初にかなたくんに会った時は、
『かさぶた』にもなってなかったから」
「これでも治ってきたほうなんだよ?^^」
「そだね^^」
ごく
「でもホントに私、演技、続けていけるのかなぁって…」
「不安な気持ちは正直ある」
「大丈夫」
「遥ちゃんならなれるよ、女優さんに^^」
「うふ 笑 どうしてだろ」
「他の人が言うとペラッペラな感じなのに
…かなたくんだとなんか信じられちゃうから不思議」
「そう?」
「うん」
「安心するっていうかぁ
…穏やかになれるっていうかぁ」
「じゃあ結婚する?」
「爆笑」
「なんでそうなるの 笑」
「で『夫婦漫才』でデビューして、それきっかけで女優に転身!」
「…はぁ」
「コンビ名はもちろん~!」
「遥か彼方!」
「遥か彼方…」
「そのネタ、正直もう飽きた 笑」
「笑」
「でも『遥か彼方』って実際どんくらいなんだろうね」
「ん?」
「『遥か彼方、遠い宇宙の!』とかって、よく映画とかで使うでしょ」
「うん」
「その距離ってどんくらいなのかなぁって」
「SFとかファンタジーとか…」
「『空想の世界』って実はそこにあるのかななんて」
「遠いって感じたら遠いし、近いって感じたら近い…そんな場所だよ」
「・・・」
「なんか知ってるような風 笑」
「知ってるよ、僕そっからきてんだもん」
「なにそれ 失笑」
「また新しいネタかなんか?」
「人って見えるものしか信じられないんだと思うんだ」
「遥か彼方が何処にあるのか…実際に行かないと誰も信じない」
「『信じる』ってシンプルな言葉だけど、
1番難しい事なんだと思うよ、きっと」
「ふーん…」
「よく分かんないや 笑」
「はは 笑」
「今は解らなくても解るように、気付ける日がくると思うんだ」
「他人のコトバを受け入れにくいのも、
自分がまだ体感してないものだから、なんだと思うし」
「うーん…」
「遥ちゃんはきっと素敵な女優さんになれるよ」
「『夫婦漫才』を経由しなくても 笑」
「あは 笑」
「そしたら遥ちゃんの思いが、
もっともっとたくさんの人に連鎖すると思うんだ」
「うん…」
「私もかなたくんから『笑顔の連鎖』の話を聞いて…」
「「女優になりたい!」って気持ちがより強くなったんだ」
「…っていうより」
「自分の思いをいろんな人に連鎖させて、
笑顔や幸せを感じて欲しいから、女優になりたいんだって」
「なりたい理由が自分でも分かってきたっていうか…」
「ふふ 笑」
「なんで笑うのよ」
「ううん、授業料幾らにしようかなぁって 笑」
「お金とるの~!? 笑」
「冗談冗談 笑」
「でもね、ひとつだけお願いがあるんだ」
「ひとつだけ?」
「あ、3つまでお願いって出来るんだっけ」
「でーきーまーせーん 笑」
「だよね 笑」
「で…お願いって?」
「遥ちゃんが女優さんになって、
たくさん連鎖が出来るようになった頃
…カードが届くと思うんだ」
「なんの?」
「誕生日会の」
「ん?」
「『誕生日会』?」
「…かなたくんの?」
「それはその時のお楽しみ^^」
「ははーん」
「その頃のかなたくんはモテモテになってるんだぁ~」
「でね」
「スルーした 爆笑」
「笑」
「その時、遥ちゃんにメッセージを読んで欲しいんだ」
「メッセージ…」
「そっ、メッセージ^^」
「うーん…そんないつかもわからないこと、私すぐ忘れちゃうかもよ」
「大丈夫、忘れてもすぐ思い出すから」
「だって2人は~!」
「遥か彼方!」
「遥か彼方」
「だもん 笑」
「ふっ 笑」
「あーぁ」
「なぁんかここでたそがれてるのも、つまんなくなってきちゃった 笑」
「 ね、後夜祭行こ?」
「先行ってて、寄るとこあるから」
「あれー?」
「かなたくん、もぅ既にモテモテなのかなぁ~?」
「ト・イ・レ 笑」
「あは 笑」
「んじゃ先に行ってるねぇ」
「うん^^」
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