エピソード56



「…でもかなたくんは後夜祭には来なかった‥」



「あとで友達やぁ先生や、クラスメイトとか」

「色んな人にかなたくんのことを聞いたんですけど…」


「知ってる人は誰も、いなかったんです 」




「…ふぅ」


「かなたくん、卒業アルバムにも載ってなくって… 苦笑」

「!?」



「とっても不思議なできごとだったけど」


「…かなたくんの言う通り、

自分が見てないものは誰も信じようとはしなくって」



「だから私、かなたくんが言ってたことがホントに起こるのか知りたくって」


「女優になる事、それだけを考えて過ごしてきたんです」



「・・・」


「勿論、大人になるにつれ、かなたくんの事は

記憶の片隅に追いやられちゃったんですけど…」


ちらっ

「さなちゃんからの


「んふふ~^^」

「さなちゃんからの招待状が届いた時、


『あぁ、あの時のかなたくんとの思い出はホンモノだったんだ』って」



「…そう感じて」





「…で、今この場にいるんです、私^^」







「…ふぅ」




「と、思い出話はここまでで」


「手紙の続き、読みますね」



「『信じること』 それは一方通行ではなかなか難しいもの」


「それを信じられるようになる状況や経験、心の在り方…

様々なものが必要なんだと思います」



「実は今日、主役であるさなちゃんと、

ちょっとした企みをしたんです」

「くすくす^^」


「でもそれを先に知ってしまうと

『疑う気持ち』が出てきてしまうので

…その企みはもう、実行済みです」

「んふふ~^^」


「さなちゃん、さなちゃんへのプレゼントの、

『バースデーケーキのろうそくの魔法』のお話、

これからするね」

「やったーー!!」



「バースデーケーキは歳の数だけろうそくを立てます」

「実はそこには深~い理由があったのです」


「8歳になったさなちゃんは、8本のろうそくを吹き消しました」



「『願いを込めて吹き消すとその願いが叶う』」


「もしかしたら皆さんどこかで聞いたことがあるかもしれません」

「でもそれは8本目のろうそくの1本だけがかける魔法」


「『はじめまして』という未来への贈り物なのです」



「さなちゃん、未来のさなちゃんにプレゼントはあげられたかなぁ?」

「あげたーっ!!^^」


「ふふ^^」


「そして残り7本のろうそくは今までの自分達に

『ありがとう』を伝える、過去への贈り物」



「さなちゃん、今までのさなちゃんたちに

『ありがとう』は言えたかなぁ?」

「いえたーっ!!^^」


「くす ^^」


「7本のろうそくには魔法はありませんが、

残りのろうそくでさなちゃんはある魔法をかけました」


「残りのろうそくを使ってさな、ちゃん‥は…」



「…ぐすっ」



「残りの、ろうそくを使って、


さなちゃんは…ぐすっ



お誕生日を、お祝いしてくれたひとたちの、」



「・・・」



「『悲しい』や『苦しい』、


『辛い』気持ちを



…ふぅ



灯火と共に、


吹き消してくれたのです…」


「ぐすっ」


「ぐすっ」



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