Episode.3



「んでその、付き合ってる人となんかあったの?」



「んと…どうやって説明すればいいんだろ」


「ノンが説明できないような内容だったら、

多分ここにいる全員わかんないぞ」


「うん、わかってる…」


「わかってる言われた 笑」



「あ!ごめんごめん」


「それで?」


「その人ね、昔のことを全然話さない人なの」

「昔のこと?」


「なんか過去に嫌なことがあったとか?」


「最初の頃にね、「過去は詮索されたくない」みたいな事を言ってて」


「私もね、過去になんにもない人の方が少ないって思うほうだし、

もしなにか深い傷を抱えてたら、それをわざわざ抉るような事もしたくないから」


「その時はあまり気にせずにいたんだけど…」



「だんだん話す機会も、会う頻度も増えて」


「…でも昔のことを全然話さないの」



「ん?それは詮索されたくないからなんじゃないの?」


「ううん、『過去』じゃなくて『昔』のこと」



「ゔっ…やばい、ホントにわかんないぞ(; ・`д・´)」


「それこそ今日のこともね、

高校時代の友達に会ってくるって言ってあるんだけど」


「自分の高校時代とか学生時代とか、

そういう、昔の思い出話みたいなものを全然話さなくって」


「「ご両親はどうしてるの?」って聞いても、曖昧な感じで逃げちゃうし」


「そうなんだ…」



「でね、彼が出てるライブを観に行った時に、彼の過去を知ってる女性が現れて」

「それで彼、その女性が現れてから急に不安な様子になっちゃって…」


「その女性が現れたことで、私自身に危機感みたいなのが芽生えて、

それをきっかけに付き合うことになったんだけど」


「だけど?」



「「自分の全部をきちんと伝えたい」ってその時に言われて」


「「でもその前に、その女性に会って確かめておきたい」って言われちゃって…」


「俺には全然わからん…


みんなが内容をそしゃくするまで待つ!」



「『全部をきちんと伝えたい』ってことは、

結構大きなものを、まだノンには明かしてないってことだよね?」


「うん」


「で『会って確かめておきたい』ってことは、何らかのカタチで

その女性がその、大きなものと関わってるんだけど、

彼自身その確証はないってことだよね?」


「…うん、たぶん」



「おお…さすが恋の天才…」



「灯里さんにもね、その事を相談したの」

「そしたら「自分で調べてみればいい」って」


「「別に相手の悪事を暴こうってわけではなく、

その人への、愛情からの行動なんだから、悪いと思わなくても大丈夫」って」



「そうだね、わたしも聞いてて同じ事思った」


「それで、1人じゃどうしたらいいか分かんないから集合かけたんだね」

「うん」


「翔くんから、希と沙織が久しぶりに会ったって話を聞いてたから」

「どうしようってなった時に、真っ先に2人の顔が浮かんだの」


「お!俺も観音様のお役に立ててたか!」

「うん、翔くんのおかげ」


「なにその『観音様』って

「そこは今、膨らまさない」


「はーい…」



「先ず手がかりとして…その付き合ってるお相手の名前を知りたいのと…

その、過去を知る女性の情報って、ノンなんかつかんでる?」


「…うん」



「今付き合ってる人はね、『落合健治』っていうの」

「!?」


「あれ?」

「なんか聞いた事あんな、その名前」


「!」


「ほら、沙織が最近聴いてるアーティストの!」



「ノン、もしかしてその人…ピアノ弾いてたりする?」


「うん」


「さっき話した『過去を知る女性』が現れたライブで彼、

サポートでピアノを弾いてて」



「サポートってことは…もしかして」


「…それ、Mika.のライブ?」


「そう、Mikaさん」

「ほら、来た!」

バンッ!


「テーブルを叩かないの!!」


「嫁に怒られてる 笑」


「すみません、マスター、うるさくしちゃって…」


「いいよいいよ気にしないでぇ」


「客はあんたらだけだし」

「あんたらの話、聞いてて面白いし」



「のんちゃんって言ったっけかな?」

「あ、はい」


「たかが喫茶店の店主だけどよ、

もし俺に何か出来そうなことあったら協力すっから」


「あ」

「ありがとうございます」



「マスター、超優しい」


「ふふ〜ん♪」

「だから私、ここの常連なんだよぉ^^」



「あ!マスター!」


「あ?」


「さっきのワッフル、もう3枚くらいもらえますか?」

「3枚て 笑」


「お前さん、相当気に入ったんだな 笑」

「時間かかるからちょっと待ってな」


「あ!」

「あとブレンド2つと…なんだっけ」


「アンティグア」


「ってやつと…緑川は?」

「いつもの」


「をお代わりで」


「はいよ」

「気長に待ってな」


「あざーす!」



「あともう一個」


「これはわたしの勘なんだけど…」



「Mika.のアルバムの後ろ姿って、もしかして…」



「…うん、私」

「マヂで!?」


「やっぱり…」



「どーっかで見たことあるなぁって思ったら、

まさかノンだったとは…」



「あー!!」

「ちょいちょい地方行ってたのって…コレだったかぁー!」


「うん」


「なになになに?」

「私1人だけ置いてきぼりなんだけど」


「ちょっと待って」


「今見せてあげるから」



ガサゴソ…



「ほら、このジャケット」


「あ、このアルバム最近話題になってるやつだ」

「知ってる!」



「…ん?」



「ってことはこの後ろ姿が…」



じーっ



「うわー!ホントにノンだー!スゲー!」


「緑川、ムッチャ時差あんぞ」

「まだ中米にいんのか? 笑」


「ってかまんまノンじゃん 笑」


「なんで気付かなかったんだろ」



「その写真を撮ったのもね、健治さんなの」

「え!?そうなんだ!?」


「じゃあ…


今までのMika.のアルバム全部、

ノンがモデルで、


健治さんが撮ってた


…ってこと?」


「うん…」



「すげー…( ゚ ρ ゚ )」


「うん」



「まさかここで、Mika.最大の謎が解明されるとは思わなかった…」


「なになになに?」

「『最大の謎』って?」


「Mika.のアルバムってね、注目される前の、最初のアルバムからずっと、

おんなじ後ろ姿が写ってて」

「うんうん」


「アルバムのクレジットには、誰が撮ったかモデルは誰か、一切書いてなくって」


「時々インスタとかで、「アルバムの場所を発見!」って報告する投稿とかもあるくらいで」

「ほえ〜」


「『あの後ろ姿は誰?』、『あの写真を撮ったのは?』って…、

アルバムのジャケット自体が、ファンの間では『最大の謎』って扱いなの」



「で」



「それがノンで、撮ってたのが今のお相手だったと…」


「そういうこと」

「すげーー!」


「だから時差あり過ぎだっちゅうねん!笑」



「他の人が知らない秘密を知ってるって、なんかワクワクすんね!」

「しかもそれがノンなんだよ!」




「沙織ぃ」



「久しぶりのノン、とんでもない破壊力だね…」




「うん」



「…ちょっと凄すぎて笑えてきた 笑」


「はは 笑」


「わかる気がする (;^ω^)」





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