5−18
「あ!」
「『思い出したくない』ってのは、僕の勝手な憶測です」
「客観的に自分を見て、「思い出したくないのかなぁって」そう思ってただけなので」
「じゃあ健治さんは記憶のパズルの、ピースが見つからないままなんですね」
「…杉下さん、無茶苦茶お洒落なこと言いますね 笑」
「ちょっとそれで1曲書けそうな気がします…
『ミッシング・ピース』とかっていうタイトルで」
「ふふ 笑」
「あ、そうだ」
「免許証とかって持ってます?」
「ちょっと確認したいことがあって」
「あ、いいですよ」
「ちょっと写真、変な顔になってますけど 笑」
ガサゴソ…
「はい」
「わっ、ホントに変な顔だ 笑」
「なんでこういう証明写真って、笑っちゃいけないんですかね 笑」
「これも写真撮った時、確認させてもらえなかったし」
「それは多分、運が悪かったんだと思いますよ^^」
「最近は確認してるほうが多いみたいですし」
「杉下さんのは?」
「私のは、事前に写真屋さんで撮ってもらったものを
持参したので、完璧です^^」
「…見せませんけど 笑」
「そっかぁ」
「健治さん、5月生まれなのかぁ」
「…健治さんはそのパズルのピース、見つけたいと思いますか?」
「んー、どうなんでしょう」
「杉下さんとこうして話してるって事は多分、
知りたいって気持ちもあるんだと思います」
「でも」
「でも?」
「今は『知りたい』って気持ちよりも、
『伝えたい』って気持ちが強い、かな」
「『伝えたい』…」
「最初にお会いした時に一緒にいた、『大切なひと』」
「それこそ、パズルのピースみたいにそのひとと、ぴったりと心が繋がったんです」
「そのひとはとても真っ直ぐな人で…テンパると、
ちょっと不思議なテンションになるんですが 笑」
「物の見方とか、食べ物の好き嫌いとか…
違うところはたーくさんあるんですけど、
心がしっくりと落ち着くんです、そのひとといると」
「・・・」
「記憶のピースは、単に見つかってないだけなんですけど、
なんだかその人に、隠してるような気分になっちゃって 苦笑」
「だから僕の全部をちゃんと伝えたいんです、その人に」
「…じゃあ健治さんは、今が一番幸せなんですね」
「いいえ」
「これからもっと幸せになるので
…一番ではないです^^」
「…そう」
「よかった」
「『壊し甲斐がある』ってのが分かって」
「え?」
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