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「あ!」

「『思い出したくない』ってのは、僕の勝手な憶測です」

「客観的に自分を見て、「思い出したくないのかなぁって」そう思ってただけなので」



「じゃあ健治さんは記憶のパズルの、ピースが見つからないままなんですね」




「…杉下さん、無茶苦茶お洒落なこと言いますね 笑」


「ちょっとそれで1曲書けそうな気がします…

『ミッシング・ピース』とかっていうタイトルで」


「ふふ 笑」



「あ、そうだ」

「免許証とかって持ってます?」


「ちょっと確認したいことがあって」

「あ、いいですよ」


「ちょっと写真、変な顔になってますけど 笑」



ガサゴソ…

「はい」


「わっ、ホントに変な顔だ 笑」


「なんでこういう証明写真って、笑っちゃいけないんですかね 笑」

「これも写真撮った時、確認させてもらえなかったし」



「それは多分、運が悪かったんだと思いますよ^^」

「最近は確認してるほうが多いみたいですし」


「杉下さんのは?」


「私のは、事前に写真屋さんで撮ってもらったものを

持参したので、完璧です^^」


「…見せませんけど 笑」




「そっかぁ」


「健治さん、5月生まれなのかぁ」




「…健治さんはそのパズルのピース、見つけたいと思いますか?」



「んー、どうなんでしょう」


「杉下さんとこうして話してるって事は多分、

知りたいって気持ちもあるんだと思います」


「でも」


「でも?」



「今は『知りたい』って気持ちよりも、

『伝えたい』って気持ちが強い、かな」


「『伝えたい』…」



「最初にお会いした時に一緒にいた、『大切なひと』」

「それこそ、パズルのピースみたいにそのひとと、ぴったりと心が繋がったんです」


「そのひとはとても真っ直ぐな人で…テンパると、

ちょっと不思議なテンションになるんですが 笑」



「物の見方とか、食べ物の好き嫌いとか…

違うところはたーくさんあるんですけど、

心がしっくりと落ち着くんです、そのひとといると」



「・・・」



「記憶のピースは、単に見つかってないだけなんですけど、

なんだかその人に、隠してるような気分になっちゃって 苦笑」


「だから僕の全部をちゃんと伝えたいんです、その人に」



「…じゃあ健治さんは、今が一番幸せなんですね」


「いいえ」



「これからもっと幸せになるので


…一番ではないです^^」




「…そう」



「よかった」





「『壊し甲斐がある』ってのが分かって」


「え?」



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