5−19
「バカ正直なのは昔から変わってないね」
「え…」
「あとその、『小っ恥ずかしい台詞』をへーきで言えるところも」
「あなたの予想通り、私は『落合健治』になる前のあなたを知っています」
「っていうか、私達、まだ恋人同士ですよ?」
「え!?」
「この免許証に記載されてる生年月日は、これで合ってます」
「自分の生年月日は覚えてるのに、大切な恋人の私を忘れるなんて」
「…ふぅ」
「その『大切なひと』ってのは、単なる浮気相手」
「10年以上行方晦ましといて、『心がぴったりとくる』?」
「なぁに浮気相手に本気になってんだか 冷笑」
「でも本当にそのひとは
「なんで私が「会いたい」って言ったと思う?」
「それは大切な話が
「『落合健治』を殺すため」
「え。。」
「あなたの中の、『落合健治』を殺すため」
「ころ、す、…って」
「大丈夫、ホントに殺すような、馬鹿な真似はしないわよ 笑」
「仕事失う気なんて更々ないし」
「自分が元々『落合健治じゃない』って事は、ちゃんと理解してるでしょ?」
こ くり
「じゃあ『落合健治は仮のもの』だってのも、ちゃんと覚えてる?」
「・・・」
「ふっ、そこは覚えてないんだ 嘲笑」
「…ホンット都合よく忘れてるんだね」
ガサゴソ…
「これ、なんだかわかる?」
「こ、せき…」
「そう、戸籍謄本」
「本当のあなたの」
「『落合健治』ってのはね、迷子になったバカのために、
仮で作ってもらってるものなの」
「迷子はね、身元が判明したら、おうちに帰らなくちゃいけないの」
「本人の記憶が戻ろうが戻るまいが、そんなのは関係なく」
「・・・」
「この免許証も、あなたが今住んでる場所も、
あなたの居場所や…その『大切なひと』も」
「ぜーんぶがチャラになるの」
「あなたは『岡崎陽介』さん」
「・・・」
「私は迷子になった陽介さんの、身柄を引き取りにきた恋人」
「本州大の吹奏楽団にあなたがやってきて、目の前でたくさーん魔法を見せてくれて」
「とん風でミックス定食を一緒に食べて、一人暮らしをし始めたあなたが合鍵を渡した相手」
「私はあなたの恋人の、
杉下里紗だよ?
『よ・う・す・け』さん♪」
「!!」
「ふふ、やっと起きたぁ^^」
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