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「バカ正直なのは昔から変わってないね」


「え…」


「あとその、『小っ恥ずかしい台詞』をへーきで言えるところも」



「あなたの予想通り、私は『落合健治』になる前のあなたを知っています」

「っていうか、私達、まだ恋人同士ですよ?」


「え!?」


「この免許証に記載されてる生年月日は、これで合ってます」

「自分の生年月日は覚えてるのに、大切な恋人の私を忘れるなんて」




「…ふぅ」


「その『大切なひと』ってのは、単なる浮気相手」


「10年以上行方晦ましといて、『心がぴったりとくる』?」

「なぁに浮気相手に本気になってんだか 冷笑」



「でも本当にそのひとは

「なんで私が「会いたい」って言ったと思う?」



「それは大切な話が

「『落合健治』を殺すため」

「え。。」




「あなたの中の、『落合健治』を殺すため」




「ころ、す、…って」



「大丈夫、ホントに殺すような、馬鹿な真似はしないわよ 笑」

「仕事失う気なんて更々ないし」




「自分が元々『落合健治じゃない』って事は、ちゃんと理解してるでしょ?」



こ くり


「じゃあ『落合健治は仮のもの』だってのも、ちゃんと覚えてる?」



「・・・」



「ふっ、そこは覚えてないんだ 嘲笑」


「…ホンット都合よく忘れてるんだね」



ガサゴソ…


「これ、なんだかわかる?」



「こ、せき…」


「そう、戸籍謄本」




「本当のあなたの」



「『落合健治』ってのはね、迷子になったバカのために、

仮で作ってもらってるものなの」


「迷子はね、身元が判明したら、おうちに帰らなくちゃいけないの」

「本人の記憶が戻ろうが戻るまいが、そんなのは関係なく」



「・・・」



「この免許証も、あなたが今住んでる場所も、

あなたの居場所や…その『大切なひと』も」


「ぜーんぶがチャラになるの」




「あなたは『岡崎陽介』さん」



「・・・」



「私は迷子になった陽介さんの、身柄を引き取りにきた恋人」



「本州大の吹奏楽団にあなたがやってきて、目の前でたくさーん魔法を見せてくれて」

「とん風でミックス定食を一緒に食べて、一人暮らしをし始めたあなたが合鍵を渡した相手」



「私はあなたの恋人の、


杉下里紗だよ?


『よ・う・す・け』さん♪」

「!!」



「ふふ、やっと起きたぁ^^」



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