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「もう陽介さんに戻ったので、『落合健治』の戸籍は無効なんですよ?」


「例え陽介さんの記憶が戻らなくても、『岡崎陽介』に戻らなきゃ駄目なんです」


「そうなりますね、法律上では」



「私、『落合健治』さんが入院していた病院に行ったんです」

「健治さんの戸籍に、本籍地として住所が記載されていたので」



「そしたら入院当時をよく知る方と私、お友達になりまして」



「その当時の陽介さん、


なんて呼ばれていたか知ってます?」


「いいえ」



「『パク様』って呼ばれてて…


韓流スター並みにモテモテだったみたいです^^」



「それがなにか」



「それで今度『パク様』と一緒に、その方を訪ねるつもりでいます」




「インターネットにも警察のデータベースにも、どこにもない情報」




「・・・」



「それともう既にMikaさんには、健治さんは陽介さんだって事は伝えてあります」

「さすがMikaさん、というか…芸術的に優れた人って、思考もとても柔軟なんですね^^」


「健治さんが陽介さんに戻る…それだけでも10曲以上は曲が書ける!って」


「ワクワクした表情で言ってました」



「「陽介さんが回復するまでアルバムは出さない!」


なんてことも言ってましたし 笑」



「・・・」



「陽介さんがアルバイトをしてる、お弁当屋さんにもお伝えしてあります」


「「名前が、落合健治だろうが岡崎陽介だろうが関係ない」って…

お店のかた、雇う気満々でした^^」



「・・・」



「今住んでいるアパートの大家さんのところにも行きましたが、

同じく、今後も使ってもらって構わないと仰っていただきました」


「まぁ別に犯罪者でもないですし、家賃収入は変わらず入りますからね」



「・・・」



「免許証のほうも、前例のない事のようですが、


運転技能や道交法が全部身についている状態であれば、

「岡崎陽介」として免許証を交付するのもさほど時間はかからないだろう、


との事でした」



「・・・」




「貴女は計画を見事実行し、『落合健治』という存在を殺しました」




「けれどそれは『法律上の』落合健治を、シュレッダーのように抹消しただけで、

関わった人達の中ではピンピンしています」



「今皆さん、落合健治さんを

『岡崎陽介さん』として受け入れる準備を、各々でしてくださっていて」



「おそらく陽介さん自身、すぐに戻ることは難しいとは思いますが…」


「それでも皆さん、


『岡崎陽介さん』に会えるのを楽しみに、待っててくださってます」



じーっ



「…ということは、貴方『岡崎一子』にまで会ったの?」



「いいえ、私はまだお会いしてません」

「一子さんは私を信頼してるんです」


「陽介さんが戻ってきたら、貴方のところなんかじゃなく、
私のところに連絡がくるはずです」

「陽介さんを一番愛してるのは、貴方じゃなくって私なんだから」



「この携帯は武田拓也さんが、一子さんからお借りしたものです」

「一子さん、陽介さんからの連絡がいつきてもいいように、機種変はしてました」


「拓也さん、一子さんを動揺させるようなことは、

まだ言う必要がないと判断をしたのですが」


「一子さんの方で、何か感じる部分があったんでしょう」


「え?」


「「最悪のケースになった場合の、

覚悟も既に出来ているから…どんな話でも、

動揺はしないし、直ぐに周りに言うこともしない」


って拓也さんに言ったんだそうです」



「それにこうも言ったそうです


…今のこの状況で私が言っても信じられないと思いますが」



「…なんて、言ったの?」




「「あの女から陽介を救ってくれ」と」


「は!?なにそれ…」



「あの女って誰?」




「…理紗さん、貴女のことです」




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