Episode.5



キャラメルフラペチーノでお待ちのお客様、次お出しします



お席の確保のほうを願いしま~す   





ご注文お伺いします^^


ドリップコーヒーをトールで


かしこまりました^^

そのほかのご注文はよろしいでしょうか


はい


コーヒーのほう、マグカップと紙カップ、

どちらでお出ししますか?


マグカップでお願いします


ありがとうございます^^



「…ふぅ」



「あ、え、い、う、え、お」



緊張しない緊張しな…


って


思ってる段階で既に手遅れなのでは…



「遅れちゃってごめんなさい」


「い、いえいえ!」


「こ、こちらこそ急にメッセージなんかしちゃって」


「何かご相談があるって…」



「宗教とかおいしいビジネスの話


ではないですよね」


「も、もちろんそういうのではなく!」

「僕、無宗教ですし…」


「おいしいって言っても弁当屋でバイトしてるんで、

そういう意味では美味しいんですが」



「ふふ 笑」


「冗談ですよ^^」



「これ、私の名刺です」

「私のほうは、自己紹介がまだだったんで」


「あ、ありがとうございます」


「僕はバイトの身分なんで名刺なんて大層なものは

「ふふ 笑」




「…ふぅ」


「なんかすみません。。」


「大丈夫です^^」



「それで私、

苗字で呼ばれるのがあまり得意ではないんで、

下の名前で呼んでください^^」



「えっと…」


「暢子です^^」


「『暢子さん』ですね!」


「じゃあ僕も、あまり名字では呼ばれないんで、

同じく下の名前で呼んでいただければ」


「了解です^^」



「それでご相談っていうのは…」


「えっと、僕、

写真の他にピアノもやっていて」

「ピアノ!」


「あ」


「って言ってもそれもプロとかではなくって!」


「セッションライブって…歌ったり演奏したりができる人

ウェルカムなライブがあって、それ観に行ってピアノも弾いたんです」


「で、僕のピアノをなぜか気に入ってくれた、

シンガーソングライターのコと知り合いになりまして 照」


「ローマ字で『Mika.』って名前で活動してるコなんですが、

彼女のライブのサポートでピアノを演奏するようになったんです」



「それ、殆どプロと一緒じゃないですか」



「まぁ一応ギャラも貰ってるので、『プロ』っちゃあプロなんですが」

「僕の中で『プロ』って、『匠』のようにその道を極めてる人や

オンリーワンな存在っていう認識があるんで」


「『プロ』って言われちゃうと、逆におこがましく感じちゃうんですよね」



「ふふ^^」


「不思議な方ですね、健治さんって^^」


「よ、よく言われます 苦笑」



「でもそういうこだわりのある方って、素敵だと思いますよ」


「そ、そうですか? 照」


「…で?」


「あ!」


「で、Mikaちゃんが僕の撮った、

暢子さんの後ろ姿の写真をすごく気に入ってくれて」


「「自主制作のアルバムのジャケットに使いたい」って言ってるんです」



「ジャケット…」



「・・・」



「写真は、撮っていただいた時に既に、OKは出してるので」


「私のほうは全然大丈夫ですよ、とても光栄な事ですし^^」


「そう言っていただけるとホント嬉しいです!」



「…が」


「が?」



「話はそれだけじゃなくって…」



「他にもあるんですか?」


「いや、他って感じでもないんですけど…」


「?」



「今後、自分が出すアルバムのジャケット全部、

暢子さんの後ろ姿で統一したいって言ってるんです」

「ぜんぶ!?」



「はい、全部…」



「・・・」



「も、勿論、Mikaちゃんには「それは難しいと思うよ」って言ってあるんで!」


「断っていただいても全然大丈夫なんですが」



「ダメ元で一応、本人に聞いてみて欲しいって言われちゃって…」




「…でも私、



もうアラサーですよ?」



「それに、30過ぎたら折り返し地点も見えてきますし」



「髪型だっていきなり変わるかもしれないし、

印象だって変わるかもしれません」




「写真って、撮ったその時その瞬間が残るじゃないですか」


「Mikaちゃん自身、自分の音楽を停滞させたくないって気持ちが強いみたいで」



「・・・」



「自分のアルバムのジャケットに、歳を重ねている被写体がいる事で、

自分の音楽も歳を重ねてるんだっていうメッセージにもなるって」



「それに

「いいですよ」


「え?」



「この話お受けします」


「ほ、本当ですか!?」



「その代わり、条件が2つあります」



「条件…」


「金銭的なものではないので、その辺はご安心ください 笑」


「はは…」



「ひとつは、顔出しはNG」


「勿論!」

「むしろ顔を出さない後ろ姿で、

見る人に色々想像させるって意図もあるんで」



「それともうひとつは…」




「『健治さん』以外の方はNG」


「え?」




「私、健治さんの撮る、写真の質感が好きなので、

この話を引き受けるんです」



「その2つが条

「ありがとうございます!」



「ふふ^^」



「や」



「や?」



「やったぁー!!」


「ふふ 笑」


「みんな見てますよ、健治さん^^」



「あ」



「す、すんません…嬉しくてつい (;´∀`)」



「…で」


「いつ頃出される予定なんですか?

その、mikaさんのアルバム」



「あ」



「それがあのぉ…」




ガサゴソッ


「実はもう完成しておりまして 苦笑」


「え!?」


「事後報告ですいません!:(;゙゚’ω゚’):」





「ぷっ失笑」



「やっぱり不思議な方ですね、健治さんって^^」


「はは 苦笑」



「それ、差し上げます!」


「ありがとうございます^^」



じー


「こうやって見ると、ますます自分じゃないみたい…」




「ちなみに…」



「はい?」



「来月8日の夜って、お時間ありますか?」



「ちょっと待ってください…」



「金曜の夜なんですけど…」




「えっと…」




「はい、空いてますよ」



「実はその日に、Mikaちゃんのライブがあるんです」

「…このアルバムのリリース記念の 笑」


「オッケーが出たら、Mikaちゃんも会いたいって言っていたので」



「場所は都内ですよね」

「はい、六本木です」


「開演時間って…」


「7時開演です、勿論夜の 笑」


「ふふ 笑」



「開演時間には間に合わないと思うんですけれど

…それで大丈夫でしたら」


「全然大丈夫です!」


「詳細はまた、メッセージのほうに送りますね」


「はい、お願いします^^」




「…ふううぅぅ」



「?」



「安心したらドッと疲れが 笑」


「ふふ^^」



「コーヒー、お代わりしますか?」


「あ、そうですね^^」


「じゃあレシート、ください」

「私行ってくるんで^^」


「え!それはなんか

「じゃあさっきの話はなかった事で」


「え!?」



にこにこ(*´◡`*)



「…えっと、レシートは…」



「健治さん、利き腕は?」


「左です…」



「じゃあズボンの、左ポケットに入ってると思います」


「お釣りと一緒に、ちょっとしわくちゃになって^^」



カサッ


「…本当だ」


     ひょい


「あ」


   「じゃあ行ってきます^^」







お願いしまーす




「すげー…」





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